2009年4月1日水曜日

プロジェクトについて


コンセプト

新潟県十日町市南西部に位置する干溝集落は、縄文からの長い歴史を持つ集落である。周辺地域の中では珍しく、古くから集落の外や海外からの移住者を受け入れてきた集落であり、新しい住民と古くからの住民が共同で一つのコミュニティを形成し、共存してきたという意味において、特徴的な歴史を持つ地域である。


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新潟県十日町市干溝集落


日々の生活や四季折々のさまざまな行事などを通じてコミュニティを形成してきた同集落ではあるが、時代の変化による少子・高齢化および生活習慣の多様化に伴い、そのつながりを継続することは年を追うごとに難しくなり、かつての「古き良き」コミュニティ像は少しずつ崩れはじめている。人と人を結ぶ縁を再びつなぎ、地域が活性化し、新しいつながりを模索するために、これまでの独自の集落形成の取り組みに加えて、集落だけでは取り組みにくかった新しいアプローチを開拓するために法政大学国際文化学部稲垣立男研究室(以下稲垣研究室)と住民との共同による住民参加型の事業を実施する。地域活性化のためのプロジェクト型事業を通じて、新たなコミュニティの形成を試みる。


プロジェクトの実際

実際のプロジェクトでは、聞き取り調査や各戸に残っている文献資料からの地域調査、また地域をテーマとした住民参加型のワークショップなどを通じて干溝の歴史・記憶を紐解いていく。さらにそれらの調査を基とした仮設の地域博物館などを設置する。


地域調査においては、事前に干溝についてキーとなる事象についてテーマを設定(例:干溝の生活、週間や行事、できごと)し、聞き取り、アンケートなどの調査をする。またワークショップでは、新しい住民が集落での過去の営みを実際に体験する機会や子供たちとのお話し会、他の地域や海外からの移住者などの文化紹介ためのワークショップなどを開催、干溝集落の住民はもちろん他地域の住民も参加し様々な文化を共有する場を開く。それらの成果の集大成を仮設の地域博物館、『干溝博物館(ミュージアム)(仮称:地元小学校からの公募などで名称決定)』として一定期間展示を行う予定である。『干溝博物館(ミュージアム)』では、地元の人々や外から訪れる人々が集い、憩い、自分達の考えや思い出を語り、自分の故郷や愛する人々との関係に想いを馳せるコミュニケーションの場となり、人々と集落との関係についての理解を深め、この地域の生活や日々の体験を共有することができる。




事業実施に期待する成果、効果

地域の活性化

集落住民と学生の交流、老人からこどもまで地域住民同士の交流、地域外の人々との交流を生む。ヒアリングと展示によって地域に残る生業、技、知恵を伝承し、地域の歴史を見直し発信することで、地域に対する誇りの醸成が生まれる。


また、このプロジェクトは、2009年度開催の越後妻有アート・トリエンナーレ開催後も継続して続けられる予定となっており、同集落で実施される地域調査を基としたプロジェクト型事業の新しい取り組みは、今後の地域活性化のためのひとつのモデルケースとなることが期待される。


学生の育成

このプロジェクトでは、稲垣研究室の学生および新潟県下の大学の各ゼミナールの学生が集落の人々やアーティスト、大学教員と協力して研究・運営に取り組む予定である。


大学が典型的な中山間地の集落に入り、リサーチのみならず、今後の展望を含めた活動を展開をすることは、都市と農村、あるいは高齢者と若者という対照的な二者が深く関わる新たな協働のモデルとなりうる。また、地域文化の伝承および、記憶の蓄積は関わる学生にとって大学というキャンパスでは学び得ない、真の体験となるだろう。


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